3.1 システム設計
オーバーフロー式が必要な理由
本システムではバクテリアが爆増するため、酸素要求量が通常の水槽と比較にならないほど高い。各ろ過方式の適合性を以下に示す。
| ろ過方式 |
ヘドロ輸送 |
酸素供給 |
適合性 |
| オーバーフロー式 |
サンプへ自動落下 |
落水曝気で十分 |
唯一の適合(◎) |
| 外部フィルター |
内部で即座に詰まる |
ポンプ循環のみ |
不適合(×) |
| 上部フィルター |
ウール・ろ材で捕捉 |
— |
不可 |
| 底面フィルター |
底床に蓄積 |
— |
不可 |
| スポンジ・投げ込み |
スポンジに捕捉 |
— |
不可 |
本システムでは従属栄養細菌の大量増殖により酸素要求量が通常の水槽より著しく高くなる。また、生成されるバイオマス(ヘドロ)をサンプへ確実に輸送できる構造が必要であることから、オーバーフロー式が必須の設計となる。
3.2 立ち上げ手順(約1ヶ月)
1
底床の選定
多孔質で水中崩壊しない底床素材を選定する。バクテリアの定着面積が大きく、栄養分が少ないことが望ましい。底床素材の化学的性質がpHロックの平衡点を決定するため、目標とする水質に応じて選択する。
2
サンプへの多孔質ろ材の充填
サンプ内に多孔質ろ材を可能な限り敷き詰める。ポンプとは区画を隔てること。バクテリアの定着面積を最大化することが目的である。
3
空回し+初回投入
水を入れてオーバーフローを空回し。ゴーストフィーディング(餌を少量投入してアンモニア源を供給)と炭素源エキス投入を開始する。数日以内に白濁が始まる。
※ 立ち上げ期間の禁止事項
換水・白濁除去剤の使用
白濁はバクテリアブルームであり、系が正常に進行していることを示す。介入すると従属栄養細菌のコロニー形成が初期化される。
4
1ヶ月継続 → 突然のクリア化
白濁したまま毎日投入を継続する。約1ヶ月後、水が急速に透明化することが観察される。これはバクテリアのフロック形成と底床への定着が完了し、系が安定状態に移行した指標である。理論上、十分な酸素と炭素源が確保された時点で従属栄養細菌によるアンモニア同化が成立するため、この段階から生体投入が可能となる。
5
水草植付け&デトリタス食性生物の投入
クリア化確認後、水草を植え付け、サンプにデトリタス食性生物を投入する。第2章で述べたフルオート方式を採用する場合は、ポンプを通過できるサイズの生物を選択する。
6
魚の段階的導入
低層魚→中層魚→上層魚→頂点捕食者の順に導入する。デトリタス食性生物が安定するまでは通常通り給餌。ポンプを通じてデトリタス食性生物が流入し、魚が自然に捕食する様子が確認できれば給餌を徐々に減らせる。
3.3 管理手順
日常の管理
系が安定した後の管理は極めて単純である。
毎日炭素源エキスを定量投入する
毎日水槽を観察する(異常確認)
随時蒸発分の足し水
随時水草のトリミング
水草を植える場合は、カリウム・マグネシウム・鉄等の微量元素の補給が必要となる。炭素源エキスへの添加、または水草用液肥の併用を検討する。
トラブルシューティング
好気性アプローチの利点は、異常が目で見て確認できること。以下のサインが見られたら対処する。
| 状況 |
観察できるサイン |
対処法 |
| ヘドロ除去が追いつかない |
サンプのヘドロが増える |
炭素源投入量を減らす・手動で吸出す |
| デトリタス食性生物が増えすぎている |
サンプが過密になる |
魚にもっと食べさせる・一部を間引く |
| 酸素が不足している |
白濁に腐臭が混じる |
エアレーション追加・ポンプを強化する |
| バランスが取れている |
水がクリアで臭いがない |
何もしなくてよい |